(※ タイトルの表記番号は ●ー● 物語番号● となっていますが、それぞれ
章番号 ー 章内の話番号 章にかかわらず物語の最初からの通し番号
となっています。よろしくお願いします。
例えば 今回は 第一章の第一話で物語の最初からの通し番号が1話目なので表記が
1-1 物語番号1 となります。よろしくお願いします。)
【1-1 物語番号1】 第一章:神様との約束 第一話:神様との口論
「なんでなんだよ。そんな話あるものか」
「到底納得などできない。もし間違いなら直ぐに元に戻してくれ。大切な家族がいるんだ」
俺は怒りの感情を抑えることができず、その声の主に大声で叫んだ。
「まあ、落ち着け。少し私と話をしようじゃないか」
その男は、いつの間にか俺の傍らにいて、そう話した。
見た目は、中肉中背のおじさんという感じで、上下とも白い服を着ていた。
髪の毛も真っ白だが‥‥‥ 顔をよく見て驚いた。
しわがない。髭もないし、剃り跡もない。
まるで10歳の子供の様に肌がつやつやだ。
この男、おじさんでもなんでもなく、意外と若いかもしれない。
とにかく、今まで見たこともない不思議な人だ‥‥いや、そもそも人間だろうか。
今日初めて会ったその見ず知らずのその男は、俺に向かって全くといっていいほど感情を表わさず淡々と話す。
「申し訳ないが、お前はもう死んでしまったのだ。お前には言いにくいが、ちょっとした間違いで予定していた者の代わりにお前が死ぬことになったのだ」
一瞬、思考が停止した。
「な‥‥なんだって」
死んだというのも勿論そうだが、そもそも「間違って」とその男は言った。どういうことだ。
そもそも人間が死ぬのに間違いなんてあり得ない。俺は到底そんな事、受け入れられない。
「代わりに」とも言っていた。そんなセリフは、もともと死ぬはずだった者を知っているからこそい言えるはずだ。
もしかしてこの男は、もともとその別の者を殺そうと思っていた殺人者なのか。
おれの頭は疑問だらけになったが、まずは頭に浮かんだ事を聞いた。
「そもそもあんたは一体、何者だ?」
俺は、少しずつ冷静さを取り戻しながらも強い口調で聞いた。
その男は答える。
「私は、お前達の言う所の神様だ。お前達の世界を管理しているものだ」
その話を聞いて、ますます訳がわからなくなった。
俺は死んだ、それも誰かの代わりに。おまけに、目の前にいる男は自分を神様と言っている。
「神様?」
神様なら、死ぬべき人間を間違う、そんなばかな事なんてしないだろう。
だが、どうやら俺が死んだ事だけは間違いなさそうだ。
大きな事故に巻き込まれた所まで確かに記憶がある。しかし不思議な事に俺の体には傷ひとつない。
おまけに、どこも痛くもない。
だとすればこれは夢か、既にあの世にいるかのどちらかなのか。
いや、まてよ。
目の前の男が本当に神様だとしたら‥‥急に腹が立ってきた。
愛する妻とかわいい子供もいる。仕事も順調で、やりがいのある大きなプロジェクトを仕事では担当し、目下最高に充実した人生を送っているのだ。
その俺の人生が、神様の間違いのせいで本当に終わってしまったとしたら、到底受け入れ難い。
俺達人間の知っている神様なら、そんなひどい事をするわけはない。
ひどい間違いをして人間を困らせるなんて‥‥そんな前提では人はとても生きてはいない。
俺の怒りの感情の矛先は、神様と名乗る男に向かって向っていった。そして叫んだ。
「あんた。なんでもできる神様だったら、もちろん元に戻せるんだろ。さっさと元に戻してくれよ」