長編オリジナル小説 「平安ヒーローズ 真 竹取物語」 (3-4 物語番号17)第三章:坂田金時出世物語 第四話:一寸法師と桃太郎 

小説

そんなある日、俺は綱さんから久しぶりに一寸法師についての話を聞いた。

全然知らなかったが、今、都で評判になっている話題の人物で、話題の中心人物とのことだった。

一寸法師事についての話を聞いたのは、都に来る前に噂話で聞いた時以来なので、もう何年ぶりだろうか。

そもそも俺自身、一寸法師には「京都に行けば、いつかは会えるかもしれない」と思っていたし、彼に会ってみたいという気持ちが、都に来るきっかけのひとつだった。

今でも俺は「一寸法師は、俺と同じように未来から来たかもしれない‥」と、桃太郎もそうだが、信じている。

なんとなく希望的な観測がそんな考えに近づけているのだろうけど、彼らに会う事が令和の時代に戻るヒントに繋がるかもしれないと思っている。

長い年月、平安時代で過ごしてきて、今となっては、唯一の手掛かりと言うより、希望と言っていいかもしれない。兎にも角にも、彼らは明るい未来を感じさせてくれるキーマン達だ。

綱さんから聞いた話を簡単にまとめると、以下の様な話になる。

少し前「一寸法師」と呼ばれる小さな若者が都にひょっこりやって来た。

彼の、知的で抜群の度胸もあるその振る舞いが、高貴な宰相に気に入られて、そのまま働く事となった。そしてとある日、主人と一緒に宮参りをした途上、盗賊が突然襲ってきた。

その際、他のお付きの者達はやられてしまったが、彼は勇敢にたたかって主人を守った。

その命がけで助けた働きが認められて、そのまま子供のいないその貴族の養子になる事となった。

帝に対してその宰相は、「実は一寸法師は以前、無実の罪で流罪となった貴族の遺児」とすぐにバレそうな理解不能な説明をして養子にする許可を得ていた。

その話は勿論、事実でないとは思うが、その宰相の後ろ盾のお蔭で、今や一寸法師は、異例の出世を遂げていた。

俺が気になったのは、その「一寸法師」が盗賊を懲らしめた時に、手に入れたと噂されている「打ち出の小槌」という不思議なツールについてだった。

噂では、その「打ち出の小槌」は様々な願いがかなう道具で、体が小さかった「一寸法師」がその不思議な力で6寸(180センチ)の大男になったとの事だった。

ますます「一寸法師」の存在そのものがは怪しい。

そんな、あり得ない事を実現している事自体が、この時代、平安の世とは不釣り合いな話なのだ。

この時代は、私が生まれた時もそうだったのだが、とかく不思議な力や現象が、神様の力という話に簡単に集約されてしまい、普通に考えたら「あり得ないだろ」と突っ込みたくなる話なのだが、

ごく自然にその不思議な事実を人々が受け入れてしまう傾向がある。

不思議な出来事を容認する事自体は、多くの人達の夢となり、辛い事も多い生活の中で、生きる希望にも繋がっているとは思う。

それぞれの人達が、自身ではとても辿り着けない非現実の夢の世界を肯定する事にもなる。

俺は、一寸法師の話を聞いた事がきっかけで、桃太郎も何をしているのかが無性に気になり始めた。

早速、検非違使の全国の情報網を使って調べてみると、桃太郎に関する情報も続々と俺の元に届いてきた。

なんと桃太郎も、今この都にいるとの事だ。

わずか15歳で、岡山から腕試しの旅に出てから、悪名高い盗賊団のアジト、通称「鬼が島」に乗り込んで見事に成敗し、鬼が島にある多くの財宝や金銀を持ち帰ったという事だ。

実に誰が聞いても興味深い話ではあるし、いかにも平安時代の人々が好みそうな話題でもある。

噂は都まで轟き、これもまた有名な貴族が、自らの身辺警備の為に、桃太郎を雇った為、今京都にいるとの事だった。勿論、桃太郎は一緒に3人の家来。危険予知の嗅覚が鋭く、勇猛果敢でとにかく力の強い「犬力」、情報収集能力が高く、諜報活動、模写の達人である「雉達」、動きが俊敏で、手先も器用な「猿動」の3人も一緒に上京しているとの事だった。

この3人を引き連れての桃太郎がチームを組んでいるのだから、俺達四天王のライバルにも成り得るポテンシャルなのかもしれない。

更には、最近、桃太郎も子供のいない貴族の養子になったとの事。確か年齢は私よりも5歳位年長のはずだから、もう立派な成人だろう。

子供の頃読んだ昔話の桃太郎の話の通りであれば、これまた一寸法師同様、打ち出の小槌や如意棒などの信じられない機能を持つツールを鬼が島から持ち帰ったはず。

チャンスがあれば一寸法師や桃太郎に会ってみたい。

今こそ、そのタイミングかもしれないとも感じている。

実際、その後暫くしてから運命の糸に手繰り寄せられる様に、俺達は顔を合わせる事となる。

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