全国各地で、酒呑童子の一味は暴れ続けた。
今では、その活動範囲は地方各地から、少しずつ都の東西南北へと近づき勢力を拡大してきた。
奴らの手口は、各地の役人を襲い殺戮と金品の強奪を繰り返し、金品を資金に更に活動を拡大していく。
それぞれの地では、奴らは強奪した金品の一部を、貧窮している民衆にばら撒いていく。
その行為に多くの人は熱狂して歓迎し受け入れていった。
令和で言えば義賊だと思うが、平安の世では、これは明らかなルール違反で、この国を治める帝への反逆行為そのものだった。
彼らの兵力は、戦いを続けるにつれて、不満を持つ多くの浪人や農民などが加わり、今では4千名は下らない烏合の衆の集まりとなっている。
俺達も対抗する為に、帝の勅旨により、全国から多くの兵を急いで集めて始めていた。
このままだと、近いうちに奴らと激突して大きな戦になる。
その事だけは間違いないだろう。
俺達にとって、目下、最優先の解決課題は、奴らとの今後の戦い方についてだった。
頼光さんと俺達は、できる事なら全面対決を避けたいと主張した。
確かに、合わせて一万名もの兵力が正面激突する総力戦ともなると、双方の多くの命を失う事になる。なにより彼らの戦力の多くが、志願して来た、ごく普通の農民である事も問題だった。
できれば最小限のダメージで、酒呑童子にとどめを刺したいと言うのが本音だったのだ。
奴らの頭領、酒呑童子さえいなくなれば、烏合の衆である奴らが崩壊していく事は容易に予想する事もできた。
俺達は、何度も繰り返し作戦について議論した。
「調略を仕掛けて、奴らの仲間割れを誘ってはどうか。内部が崩壊したタイミングで総攻撃をすれば容易に決着するはず」
「いやいや、調略には時間がかかる。その間にも奴らは勢力を増す。それに調略はよほど巧妙な仕掛けでなければ、あれだけ悪知恵のきく酒呑童子の事だ。成功の確率は低いだろう」
「とにかくどんな仕掛けでも、最終的に全面衝突になれば、被害は甚大だ。兎に角、全面戦争だけは避けなければならない」
それぞれが主張するも、その策は一長一短で、いくら時間を費やして話し合っても、皆が納得できる形では意見が集約されなかった。
そんな中、頼光さんが、そんな皆の話をじっと黙って聞いていたが、急に立ち上がり、俺達をじろりと見渡してから言った。
「最小限の人数で酒呑童子一人を狙って急襲しよう」
「やはり多くの民を傷つける訳にはいかない」
俺達も、それについては同感だった。そして具体的には、かなりのリスクを要するが、相手のアジトに精鋭で忍び込み、奴にとどめを刺す方法に決まった。
具体的には、以下の様に進める。
まずは奴らの砦への潜入だが、悪人だが不思議と信心深いという噂の酒呑童子を油断させる為に、全員が修行僧、山伏の服装で、一夜の宿を頼み砦の中に潜り込む。
俺達は、美味しい食べ物やお酒を沢山持ち込み、奴を油断させ、眠り薬か毒を盛り、奴が弱った時点でとどめを刺すというものだった。
俺は、相手を油断させる為にも、最終的には俺達四天王の4人だけで行く事を提案した。
だが頼光さんは、自分も行くと言って聞かなかった。
結局は、頼光さんを含め5人で潜入する事となった。
千人以上の敵に俺達たった5人で挑む。
勿論これは、一見、無謀な作戦だ。
しかし、そんな大胆な事をするとは奴らにとっては想定の範囲外の事だろう。
勿論、想像もしていないのだから、きっと酒呑童子も隙を見せるに違いない。
俺達はそう最終的に判断し、決行は明日と決めた。