長編オリジナル小説 「平安ヒーローズ 真 竹取物語」 (3-7 物語番号20) 第三章:坂田金時出世物語 第七話:酒呑童子

小説

決行の日の朝。

その日は、あいにくの雨だったが、まだ薄暗いうちから頼光さんと俺達四天王の4人が、ぼろぼろの修験者の装束で身支度をして、急いで酒呑童子のアジトへと向かって行く。

かなりの速足で行ったが、奴らの砦の前に着いた頃、もう夕暮れ時だった。

俺達はゆっくりと、砦の門の方へ近づいてき、門番に向かって大声で叫ぶ。

「通りがかりの旅の修験者です。誠に申し訳ありませんが、この辺りに雨露をしのいで休める様な所がありません。決してお邪魔はしませんので、よろしければ今宵、馬小屋でもなんでも構いませんので、雨露をしのげる所を貸しては頂けないでしょうか」

その、門番はいかにも面倒くさそうな様子だった。

そして一言。

「そんな事、俺達はお前らには関係もないし、ましてや義理もない。とっとと立ち去れ」と言う。

俺達も、なんとか中に入りたいので「我々の修業では武術も随分鍛錬しております。戦いを控える皆さまの何かお役にたてるかもれません」と言って、食い下がる。

そんな会話を聞いていた、門の奥にいたリーダー格の男が、腕自慢なのか、俺達に言う。

「なかなか面白い事を言うな。修行僧のくせに武術とは。丁度今日は1日暇を持て余して、体がなまっていたところだ。それなら俺が稽古をつけてやる」

そう言って、2、3人の者を連れて門外に来た。

「誰でもいいから俺にかかってこい」そう門番の男が言うものだから、先ず俺が相手をした。

その門番のリーダーの腕前は、勿論大したことはなかった。

しかし、あまり簡単に負かしてしまうと、かえって不審がられるので、うまい具合に勝ちも負けもしない様に手加減をしながら、暫くの間、相手を続けていた。

そんな俺達の戦いの様子を酒呑童子がどこからで見ていた様だ。

俺達の所に、にやにやしながら、よく見ると薄ら笑いを浮かべながらこちらに近寄ってきた。

「お前ら只者ではないな」

「よく修行している様だし、よかったら俺達と一緒に都の者達と戦わないか」

「そうだ、腹も減っているだろう。先ずは一緒にうまい肴で酒でも飲まないか」

そう言って俺達の思惑通り誘ってきた。

そもそも、自己紹介をした訳ではなかったが、その男が酒呑童子である事は、一目瞭然だった。

7尺(2M)位の背丈。

色黒で、体格は丸太の様な腕や広い肩幅、胸板も今まで見た事も無いほど厚い。

俺達4天王も立派な体格をしているとは思うが、俺達よりひと回り更に大きく感じる。

この体でひとたび戦えば、恐らく無双状態だろう。土蜘蛛が進んで配下になったと言うのも何か納得できる様な気がした。

酒呑童子が俺達に興味を持って声を掛けたのは、5人共、平安の世にはあまりいない立派な体格だったからだと思う。

俺達はできるだけ、超人的とも言える武道の達人のオーラを出さないように気を付けてはいた。

しかし、奴はそれなりの雰囲気も感じていたのかもしれない。

酒呑童子も自分に迫る体格の男たちは今まであまり見た事は無かっただろう。

酒呑童子は続けて言った。

「そもそも、お前達はどこから来たのだ」

「それに、随分いい体格をしておるが、今までどんな修行をしてきたらそんな風になるのか」

俺達に興味津々だ。

その問いかけに、頼光さんが代表して答える。

「大峰山より参った」

「まずは、もてなしを頂き有難きこと」

「我らは皆、長い間肉体の限界に挑み続け、今だ、道半ばであり、今日に至っておる」

酒呑童子は悪名こそ轟いていた。

しかし、令和時代の人間の感覚だとどことなく魅力のある男だったし、特に日本中の農民や、その日のその日の生活に困っている者達には絶大な人気があった。

綱さんの言葉にも満面の笑みで、うんうんと頷いている。

興味あるものに純粋に惹かれ、身分や立場に関係なく、素直に同じ目線で接する事ができる。

それも決して高圧的ではなく、いつの間にか引き込まれる感じさえする。

令和の時代なら、若手のやり手ベンチャー企業の社長と言った所だ。

次々と顧客とパートナーを巻き込んでいき、あれよ、あれよという間に会社の規模を拡大し、大企業になっていく。

そんな感じの人は、たまにいるのかもしれない。

だが、それに加えて人望があり、いつの間にか周りに人が集まり、皆が支えて付いていきたくなってしまう人は殆どいないのだろう。

勿論会社の実績と従業員の満足度を同時に実現できる理想の上司になれるだろう。

酒呑童子が、そんなカリスマ性がある。

倒すべき敵でなければ、あっぱれな漢だ。一度ゆっくりと話してみたい。重ねて言うが、生まれて来た時代を間違ったとしか言いようがない。

とは言いつつ、奴には確かに正義はあるが、平安の世に於いて、大義はない。

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