長編オリジナル小説 「平安ヒーローズ 真 竹取物語」 (4-2 物語番号23)第四章:真竹取物語 第二話:かぐや姫を調査せよ

小説

右大臣になったものの、元々こんな貴族の生活に憧れていたわけでもなく、毎日が退屈な日々となっていた。こんな事なら、頼光さんの所で悪人達と戦っていた方がよっぽど気が紛れていた事だろう。

そんなある日、帝から呼ばれた。

「朕からそちにお願いがある」

「お前も知っての通り朕には2人の皇子がおる。その二人が、二人とも同じ女人に求愛し、その結果無残にも失敗したとの事じゃ」

「そもそも皇子たちに大いに問題があったが、その女人の見事な対応に朕は大いに興味を持った」

「そこで、お前にその女人について調べてきて欲しい。お前もいつまでも一人のままとはいかないだろう。絶世の美女と評判のその女人に会ってきて本人が了承してくれれば結婚してはいかがか」

「その女人は、竹取の翁の娘で、かぐやと言う姫じゃ」

「暫くは昇殿せずとも良いから姫に会って、連れたて帰り、朕にその方から詳し話を聞かせて欲しい」

という話だった。

元より俺には令和の時代に最愛の有紀さんがいるので求愛や結婚には関心はない。

だが、この時ばかりは少し様子が違った。

あのかぐや姫の名前が出たのだ。会ってみたいという好奇心の方が圧倒的に勝っていた。

竹取物語のかぐや姫、その物語の中では月から来た宇宙人なのだ。

当然令和の時代に戻れる大チャンスと言わざるを得ない。

一も二もなく帝に「承知つかまつりました」と言って、かぐや姫に求愛をした2人の皇子についての詳しい話を伺った。

帝の2人の皇子は、1人目は石作皇子(いしづくりのみこ)。

優れた帝の息子ではあり、和歌の才はあるが、それ以外は凡人の様だ。

かぐや姫に対してプレゼント攻勢をするが、相手にされず、あまりにもしつこく迫った為、かぐや姫は仕方なく、お願い事を聞いてくれたら結婚してもいいと言った様だ。

そのお願い事とは「仏の御石の鉢」を持ってきてくれというものだった。

ちなみに「仏の御石の鉢」とは、釈迦が成道(しょうどう)の折、要は悟りを開いた時に、弟子や支持者達が金銀7宝の椀を勧めたが、釈迦は石製の椀を望んだ。

その椀は釈迦の死後、梵天が聖椀法論の椀として供養したと言われる。

石作皇子はインドにこれを探しに行ったと周りに言いふらし、実の所は奈良の山中に隠れ、3年後に、寺の古い椀を強引に持ち出し、それを「仏の御石の鉢」と言ってかぐや姫の所に持って行ったそうだ。ちなみにこの皇子は財力も権力もなくお世話になった人や仕える人に敬意を払われない。

そんな人だから、強引に持ち出した椀の事はすぐに伝わり、求愛に失敗したとの事。

おまけにその椀は何の光も放たず、一目で偽物とわかるものだった。

本物の「仏の御石の鉢」は光を放ったと言われるが、その椀は少しも光を放つことはなかった。

2人目の皇子は車持皇子(くらもちのみこ)。

兄の石作皇子が失敗したと聞き、ならば自分がとかぐや姫に求愛した。

車持皇子は母親の実家が裕福であった事から、莫大な資力も兼ね備えている上に策略にも長けていた。

かぐや姫は石作皇子には「蓬莱の玉の枝」を持って来るように言ったそうだ。

ちなみに「蓬莱の玉の枝」は、蓮山にある根が銀で茎が金で白い球の実がなる木の枝の事で、これも伝説の枝だ。

その当時、大阪、当時の難波には伝説の細工師がいる事を聞き及び、皇子はお忍びでそのものに会いに行った。そして、蓬莱の玉の枝の偽物を作る事を依頼した。

そして完成後に、その枝を立派な箱に入れてかぐや姫の所に持ってきた。

それは見事な枝だった。

車持皇子は弁もたち、その枝を得る為に、いかに苦労したのかを延々と説明をした。

その枝の見た目の豪華さと、その枝を得るまでのサクセスストーリーがあまりにも良くできていたので、かぐやの翁をはじめ周りの者達は本物と信じた。

流石にかぐや姫もこれには観念したかにも思えたが、かぐや姫はどこからともなくある人物を門外から屋敷に招き入れた。

それは難波の伝説の細工師だった。その職人は中に入るなり大声で話を始めた。かなり興奮している様だった。

「私は3年近く屋敷に閉じ込められ、家族をはじめ外部との接触を一切禁じられる中、内密に装飾の枝を作る様に命じられました」

「そしてようやく完成させたと思ったら、依頼主のそちらの方が、ようやく作った枝と共に、私の前から突然消えてしまったのです」

「今しがた、お話を聞きました。依頼されたのは皇子様だったのですね」

「高貴な方なのに、突然置いてきぼりにされ、私はいまだに礼金さえ受け取っておりません。皇子様、直ぐにでも製作した費用のお支払いをお願いします」

「もし支払いできないのなら、そもそもこれを依頼をされました、こちらの姫様に代わりにお支払い頂けないでしょうか」

そう言ったものだから、皇子の数々の嘘も露見し、惨めにもその場から慌てて退散した。

その様子は、瞬く間に都中に、その皇子の惨めな話は拡がった。

明日、昔話で有名な伝説のかぐや姫に俺は会いに行く。

どんな人なのか、本当に月から来た異星人なのか、だとしたらタイムマシン―ン位は持っているかもしれない。

とにかく、今日は興奮して眠れそうにない。

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