長編オリジナル小説 「平安ヒーローズ 真 竹取物語」 (1-6 物語番号6)第一章:神様との約束  第六話:おかしな世界の話

平安ヒーローズ 真竹取物語

俺は目覚めた。

ベッドも布団もなく、白い床の上で直接横になっていた。

              

「ここは何処だ?」

柱に車が勢いよくぶつかったのだから、恐らく俺は病院にいるはずだ。

だがここはどう見ても病院ではない。

あれだけの事故なら、奇跡的に回避できたとしても、体には多少の怪我があってもいいはずだが、俺の体は切り傷ひとつない。それにどこも痛くない。

真っ白な部屋みたいだが、出入口はなく、寒暖も感じない。

四方とも窓がなく、室内に物は一切ないが、不思議と息苦しさは感じない。

「そもそもどうやって俺はこの部屋に入ったんだろう」

精一杯、考えてはみるが、解決の糸口さえ見つからない。

こんな時はどうする‥‥もちろん何も良いアイディアなど出てこない。

「誰か、誰かいませんか‥‥」

大声で叫んだ。

人間追い込まれると本能で反応する。

それからしばらく叫んでいたが、少し疲れてきた。

大きく息を吸い、左右を見た。何の反応もない。

その時‥

どこからともなく、声が聞こえてきた。

窓もスピーカーもなく、誰も俺以外この部屋に人がいないはずだが、はっきりとその声は聞こえた。

「お前は死んだんだよ」

そう聞こえた。

自分の耳を疑った。

死んでいる‥‥

俺はその声の方向に向かって慌てて尋ねる。

「もう一度言ってくれ」

その声は答える

「お前は不幸な事故に遭い即死した。お前の体はもう存在しないのだ」

「そして今のお前は、魂だけでここにいる」

                

そして‥‥

神様と名乗るその男は、誰かの代わりに俺が死んでしまった事を、無情にも伝えたのだった。

目の前の不思議な人は神様?

俺は、その神と名乗る男と話を続けた。

「さっきは感情的になり申し訳ないです。ですが私の気持ちもわかるでしょう」

「私たちの知っている神様は、人間の願いを叶えてくれたり、運命を変えたりしてくれます」

「それに神様でしたら、全てを作ったり変えたりできますよね」

「間違いでしたら、私を元に戻してください」

一方的に話しているうちに、俺は冷静になっていた。

とにかく今の状況を変える為には、目の前のこの男に問題を解決してもらうしかないのだ。

そう思うと、自然と言葉使いも丁寧になる。

目の前にいるのは神様だと自らに言い聞かせ、信じてみる事にした。

その神様は表情一つ変えずに答えた。

「すまないね。元には戻せない」

「私にできるのは、人間や動物など、生きているものの運命を変えたり、これから生まれる者の縁を与えたり、死んだ者を何か別の生き物に生まれ変わらせる事だ」

「だから、お前を元には戻す事はできない」

続けて話す。

「私にできるのは、お前の魂を何処かで生まれ変わらせることだけだ」

「ただし、生まれ変わるのは、人間か動物化かはわからない」

「それに生まれ変わると、記憶も前世のものは消えてしまう」

私はその話を聞いて、目の前が真っ暗になった。

「生まれ変わるのなら人間とは限らないし、その時の私には家族との記憶も残っていない訳ですね」

俺はその時、そう答えるのがやっとだった。

神様は無情にも答える。

「そうだ、その通りだ」

「前回生きていた時の善行の蓄積で生まれ変わるものが決まり、生まれ変わり先も決まる」

「残忍な犯罪などを起こしたものは、再び周りに迷惑を掛けない様に、生まれ変わる先は恐らくは人間ではないだろう。多分あまり周りに影響を与えない生物だろう」

俺は、その話を聞いているうちに、絶望感が漂い、ますます落ち込んできた。

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