長編オリジナル小説 「平安ヒーローズ 真 竹取物語」 (2-1 物語番号8)第二章:金太郎誕生  第一話:金太郎誕生

平安ヒーローズ 真竹取物語

俺は目覚めた。

   

どうやら、神様が言った通り、生まれ変わった様だ。

周りはかすかに見える程度だ。視力はかなり落ちている。

立ち上がることも、動く事さえもできない。

それはそうだ。

「俺は赤ん坊だ」と改めて思った。

首も動かすことはできず、目だけで周囲をぐるりと見た。

抱き上げて立っている女性が俺の事をじっと見ている。

横で寝ている方の女性は、恐らく俺の新しい母親だろう。

残念ながら今までの母親とは違う様だ。

                 

立っている女性は、寝ている女性に言う。

「男の子が無事に生まれたよ。目もしっかり開いた」

横になっている女性が聞いた。

「ありがとう。元気な赤ちゃんですか」

            

暫くの沈黙の後、立っている女性は怪訝な顔で、

「いや、不思議だね」

「この子、泣かないね。大丈夫かしら」

たった今、出産により生まれた。

普通の元気な赤ちゃんなら、泣き叫ぶという事か。

そう気付いてから、俺は泣き声で「おぎゃー」と言おうとした。

だが、恐らく口の周りの筋肉がまだ十分に発達していないせいか、思った様には声が出ない。

何でもいいからとりあえずは叫んでやろうと、思いっ切り声をあげた

「ギャー ギャー」

自然とそんな泣き声になった。

これが俺の生まれ変わった時の記憶だった。

                   

確かに俺は赤ん坊だが、頭の中は昔の記憶がしっかり残っている33歳の大人のおじさんだ。

自分が赤ん坊であること自体、違和感だらけだ。

とりあえず日本語で話しているのでここは日本で生まれた様だが、この環境に慣れるのには少し時間がかかりそうだ。

「大丈夫だ。この子、元気に泣き出したよ。もう安心だよ」

              

立っている女性は言う

こっちもなんだか、無事に生まれてきて安心した。

とにかく今の状況を把握しよう。

そもそも、ここは何処で、いつの時代に生まれたのだろう。

何か情報がないかと思い、周りを注意深く見た。

そして、どんな些細な話も聞き洩らさないように集中した。

見渡すと、和風の居間で、障子もある。

やはり日本という事はわかったが、その雰囲気でかなり古い時代である事はわかった。

部屋の中には、クーラーやテレビなどの設備もなく、そもそも場所も私たちが知っている、病院施設ではない。

普通の部屋の布団での出産で、取り上げてくれたのは産婆。

2人の女性は、素材は麻の様だが、古い和服だ。

現時点の情報で判断すると、少なくとも明治以降ではなく、もっと古い江戸時代以前、そんな感じだろうか。

          

なんだか、すごく疲れた。まずは寝よう。

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