渡辺綱さんは、強いだけでなく、冷静な紳士で、頭も切れた。
そして、更には官位を持つ貴族でもあった。
最初に、足柄山に住んでいる、元ちゃんと信ちゃんの両親を説得してくれた。v
両親とも、最初はびっくりしていたが、この侍の貫禄と、流れるような弁にも圧倒されて、最後には「しっかりものの金ちゃんが、一緒に行くならばしかたない」と、了解してくれた。
それから次に、俺の家に一緒に行った。
そして、渡辺綱さんは母親に話した。
「私は源頼光様の家来で、渡辺綱と申します。頼光様の命で、優秀な人材を全国で探していました」
「金太郎殿は、私が全国に探しに行き、過去に会ったもののなかでもおそらく1番優秀な人材です。一緒に都に連れて行かせて頂きたい」
そう言ってくれた。
俺の母親は、その話を聞いた時にかなり困惑していた。そもそも俺が足柄山で、毎日何をやっているのかも、ろくには知らなかったのだ。
しかし母親は、元々都の人だったので源頼光さんの評判は知っていた。
かなりの有名人の様だ。
渡辺綱さんも、母から私が都で蔵人をしていた貴族の子供と聞いて、驚いていた。
「母上殿、坂田家が貴族の家柄であれば、いずれは都で官位も貰えるだろうし、何時かは、帝拝謁の機会も叶うかもしれません」そう言った。
母は、その話を聞いて喜んだ。
しかし、それでも行かせるかどうかを悩んでいた。
そして最後に私に尋ねた。
「金太郎は本当に都に行きたいのかね」
「母はお前を本当は行かせたくない。頼光様は勇猛な武将として名高いのだから、恐らくお前もこれから危険な目に会う機会が多い事でしょう」
「母はお前をそんな目には合わせたくない」
俺に、涙ながらにそう念押しした。
俺は真剣な顔で、「どうしても都に行って力を試したいのです」
「母上、安心して下さい。頂いたこの命、必ず大切にいたします」
「必ず生き抜いて、日本一の侍となります」と答えた。
母は、「お前がそれ程、言うのであれば母は、無理に反対はしません。ただ、体だけは大切にしてくださいね。それが母の唯一の願いです」
そうは言ってはいたが、母は泣きっぱなしだった。
そして、最後は俺の事を都に送り込んでくれたのだった。
※第二章は終わりです。第三章はいよいよ金太郎が京都へ行き「坂田金時出世物語」が始まります。