長編オリジナル小説 「平安ヒーローズ 真 竹取物語」 (4-4 物語番号25)第四章:真竹取物語 第四話:姫の告白

小説

子の刻丁度に、翁の屋敷に行った。翁は、長年嫁に行く事を拒んできたかぐや姫が、結婚を承諾しそうな事が余程嬉しかったのだろう。

終始機嫌が良く、ニコニコしながら俺を迎えた。

まあ、とは言っても、俺にその気がないのだから、結婚は実現され事はないだろうが‥

俺は奥へ案内されて、一人で、かぐや姫の部屋の前室で待たされた。

「お入り下さい」

かぐや姫が招き入れた。

俺は、早速かぐや姫の部屋に入って行き、簾を押してその中に入ろうとした。その瞬間、奥のかぐや姫の方から思わず目を閉じてしまいそうな程眩しい光が俺に向かって発せされた。

この光の強さは尋常ではなかった。

令和のLED技術者の立場としては、平安時代の技術では、とても実現できないレベルの明るい光である事だけはすぐに理解できた。

俺自身、一瞬戸惑ったが、あらかじめかぐや姫は普通の平安時代の人ではないという前提で心構えをしていたせいだろう。

それに、その現実離れした光は俺自身の予想が正しかった事が確信でき、心底嬉しかった。

俺の反応を確認して、かぐや姫は冷静に、丁寧な口調で言う。

「あなた様は、この光に驚かれませんね」

「普通の人は、こんな非現実的な事が目の前で起こると、慌てて逃げだすか、錯乱するかのどちらかです」

「あなたはそのどちらでもないのですね」

「きっとあなた自身、目の前で起こっていることを、現実として受け入れられたか、もしくは驚き過ぎて反応できなくなってしまったかのどちらなのでしょうか」

俺は、強い光で一時的に視力を失っていた。目を開けたままではいられなかったので、目を閉じたままで姫の姿は見る事はできなかったが、努めて冷静に答えた。

「かぐや姫、それはどうでしょう。何故このような事をなさるのですか」

かぐや姫は答える。

「せっかく私の所にお越し頂きましたが、私はあなた様の元へは嫁げません」

「一度はあなた様からの求婚を受け入れましたが、本当の事をお話しすると、私は月から来た者で、この星の人間ではありません」

「この星の人間ではないので、残念ながら、貴方には嫁ぐ事ができないのです」

「私が月の人間である事の証拠に、貴方に月の光をお見せしました」

「この光こそ、月に住むの者にのみ許される力でございます」。

恐らく平安時代の人達が、こんなそれらしいが不思議な話を突然されると、例の不思議な力を簡単に信じ、受け入れる文化もあるから、驚きはするだろうが、その話を信じる事だろう。

しかし、残念ながら俺は令和から来た未来人だった。

かぐや姫が行った事が、平安時代にない技術で実現されている事をすぐに理解した。

かぐや姫の思惑は外れるだろう。

しかし、なぜ、かぐや姫はなぜこんな手の込んだ事をするのか、という思いが頭を過った。

恐らく結婚を断る為の、彼女の最後の一手だろうと予測した。

一方、俺にとっては、このサプライズはうれしい誤算だった。

彼女の行為は、予想通り、令和に戻る可能性を強く感じさせてくれる瞬間になったからだ。

俺は、できるだけかぐや姫の気持ちを混乱させない様に、どんな話を、どういう風に話すか迷ったが、話し始める。

「これから私が話すことを驚かずに聞いて下さい」

「あなたがお話になった月の事ですが、残念ながら月は生物が生息できる環境ではありません」

「もしかして、何かの事実を隠すためにその話をされているのではないですか」

「今、この部屋から発せられた光も、あなたがお話しされた様に確かにこの平安時代にはないものと思います」

「しかし、千年くらい後の時代では、どこの家庭にもある普通の技術です。私は少なくともその事を知っています」

「私に、もし話せる事情があるのであれば話して貰えないでしょうか」

一か八かだとは思ったが、現状を打破し、活路を開く為に、直球で話してみた。

俺自身の秘密を、この時代で初めて告白したのだから、多少のリスクもあった。

だが、中央突破しかないとなんとなくないと感じた。ある意味必死だった。

俺の話を聞いた後、かぐや姫は長い間黙っていた。

それから沈黙を破って、意を決した様子で話し始めた。

「右大臣様、あなた様は未来からいらした方なのですね」

「昼間の燃えなかった衣も、貴方が持ち込んだか、この時代で作られたものですか」

そう聞いて来た。

内心、予想通りの彼女の反応に俺は嬉しかった。

「そうです。私はこれから千年以上後の令和という時代から来た未来人です」

「衣はあなたが話された通り自分で原料を集めて作ったものです」

そう言うと、かぐや姫は答えた。

「そうですか。それで納得できました」

「私も正直にお話しします。私も貴方様と同じく未来から故あってこの時代に来たものです」

「どうやら貴方様より少し先の未来の様です」

そう言われて俺の心はますます高鳴った。

ついに来た。

平安時代に来て、この瞬間をどんなに待ち続けていた事だろう。

かぐや姫は未来人‥‥それも俺達が生きていた令和より後の時代。

当然タイムマシンで来たに違いないと思った。

やったぞ。きっとこれで令和の時代に戻れる。

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